AIスピーキング
要点 AIスピーキング宿題がうまくいくのは、教えたばかりの授業の延長として出すときです。生徒はAIを相手に同じ表現を練習し、フィードバックを読んで再挑戦し、先生は次の授業の前に結果を確認します。
- 目標を1つ、成功基準を2〜3つ決め、手持ちの教材から短いタスク(10〜15分程度)を作ります。
- 少なくとも2回取り組ませます。生徒がフィードバックを生かすのは2回目です。
- 確認は15分程度で済ませます。提出状況、多かった問題2〜3点、自分で確認するいくつかの回答を見ます。
- 口頭で答える、個人的で授業に結びついた課題にし、短い振り返りと授業での簡単な確認を加えて、不正を防ぎます。
- AIのスコアは目安として扱い、年齢とデータの規則を確認しましょう(ユネスコの2023年のガイダンスは、授業でのAIツールの利用に13歳という年齢制限を設けています)。物珍しさが薄れることも想定しておきます。
AIなしでスピーキングの宿題を出すのが難しいのはなぜ?
AIなしでスピーキングの宿題を出すのが難しいのは、話す練習には応答してくれる聞き手が必要なのに、先生が家にいる生徒全員の話を聞くことはできないからです。相手がいなければ、話すタスクは誰もいない部屋での音読になり、音声メモを提出させれば、先生が何時間も聞くことになります。
スピーキングには、授業で確保できる以上の時間も必要です。Paul Nationの4つのストランド(four strands)の枠組み(2007年)によると、よく設計された語学コースは、意味重視のインプット、意味重視のアウトプット、言語重視の学習、流暢さの育成に、ほぼ同じ時間を割きます。スピーキングはアウトプットと流暢さのストランドに入りますが、ここは授業に収めるのが難しい部分です。一斉授業での発話では、45分を25人で分けると、先生がまったく話さなくても一人2分に届きません。
不安も問題を大きくします。インドネシアの職業高校の生徒573人を対象とした研究(Bashoriら、2022年)は、スピーキングを4技能のうち最も不安を引き起こすものとしており、インタビューを受けた生徒たちは、クラスメートよりも音声認識のウェブサイトに向かって話すほうが不安が少ないと感じていました。
AIスピーキング宿題とは、生徒が授業外で、AIの会話相手や音声認識ツールを使って行うスピーキングのタスクです。AIは生徒に応答し、毎回の取り組みにフィードバックを返します。25件のチャットボット研究のレビュー(Huang、Hew、Fryer、2022年)は、実用面での強みとして、即時性、使いやすさ、個別化の3つを挙げています。自動音声認識(ASR)は、音声を文字に変換し、期待された発話と比べる技術で、発音にも役立ちます。15件の研究を対象とした2024年のメタ分析では、全体的な効果は中程度(g = 0.69)で、フィードバックが明示的な場合に最も大きくなりました。
AIスピーキング宿題の出し方をステップごとに
AIスピーキング宿題は8つのステップで出します。目標を決める、タスクの種類を選ぶ、手持ちの教材から作る、評価基準を決める、割り当てる、生徒がすぐにフィードバックを受けながら練習する、確認して採点する、結果を授業で生かす、の8つです。
- 目標を決める。今週の授業から、生徒ができるようになるべきことを1つ選びます。たとえば「目印を2つ使って道を尋ねたり教えたりする」などです。
- タスクの種類を選ぶ。目標に合わせて選びます。機能的な表現ならロールプレイ、流暢さなら時間を計った再話、ディスカッションなら意見を述べるタスク、発音なら文のドリルです。
- 手持ちの教材から作る。授業で使った教科書のページ、本文、スライド、動画から始めると、宿題で同じ表現をくり返し使えます。場面、AIの役、目標表現3〜6つを書き、一度自分でタスクを試してみましょう。
- 評価基準を決める。「問題を説明している」「目標表現を3つ使っている」など、答えを聞いて判断できる成功基準を2〜3つ書きます。英語スピーキング評価ルーブリックの評価項目も参考にできます。
- 割り当てる。締め切り、時間の目安(10〜15分)、取り組む回数、提出だけを評価するのか成績に入れるのかを伝えます。
- 生徒がすぐにフィードバックを受けながら練習する。生徒はタスクに取り組み、フィードバックを読み、少なくとも1つ直してもう一度取り組みます。
- 確認して採点する。すべてを聞くのではなく、下の短い確認手順を使います。宿題を成績に入れる場合は、自分の評価基準で点数を調整します。
- 結果を授業で生かす。次の授業の冒頭で多かった問題を2〜3点取り上げ、生徒にペアでもう一度タスクをさせます。
AvoLabsが提供するAI語学学習サービスのAvoLingoでは、先生用ダッシュボードでステップ3〜7を行えます。先生は手持ちの教材(アップロードしたPDFや画像、入力したテーマ、YouTubeのリンク、または「Bulk Builder」(一括作成ツール)での教科書まるごと)から、8種類の課題タイプで話す・書く宿題を作り、各タスクを編集・プレビューできます。先生が割り当てるまで、生徒には何も届きません。生徒はAIのフィードバックと、単語や文の発音スコアをすぐに受け取ります。先生はあとで確認し、独自の評価項目と比重で採点して、「Homework by Date」(日付別の宿題)や「Classroom Insights」(クラスの分析)で進捗を追えます。先生は無料ではじめられます。
2回目の取り組みを求めるのはなぜ?
2回目に取り組むことで、生徒はタスクの記憶が新しいうちにフィードバックを生かせます。4/3/2テクニックでは、学習者が同じ話を、相手を変えながら4分、3分、2分と時間を短くして3回話します。ArevartとNation(1991年)は、話す速さが大きく伸び、言いよどみが減ったことを報告しています。教室での研究では、正しい形をただ聞かせるよりも、学習者に自分で直すよう促すフィードバックのほうが効果が大きいことがわかっています(LysterとSaito、2010年)。
15分でできる確認の手順
- 提出状況を確認し、参加として数えます。
- クラスのフィードバックにざっと目を通し、多かった問題を2〜3点見つけます。
- 2〜3人の回答を自分で聞くか読みます。判断に迷うものを1つ含めます。
- 宿題を成績に入れる場合は、自分の評価基準で点数を調整します。
- 次の授業で行う5分間のフォローアップを計画します。
英語の授業で使えるスピーキング宿題のアイデア12選
ここで紹介する12のスピーキング宿題のアイデアは、英語をはじめとする語学の授業で使えるもので、どれも授業に取って代わるのではなく、授業を延長するものです。レベルはCEFRの尺度(初級者のA1からC2まで)で示しており、あくまで目安です。
| アイデア | 進め方 | 目安のレベル | 主なスキル |
|---|---|---|---|
| ロールプレイの練習 | 授業のロールプレイ(カフェ、ホテルのチェックイン、就職面接)を、AIを相手役にして2回くり返す | A2〜B2 | やり取り |
| 4/3/2の再話(アレンジ版) | 同じ話を、毎回時間を短くして3回話し、その間にフィードバックを読む | A2〜C1 | 流暢さ |
| 読んだ内容の再話 | 授業で読んだ文章を口頭で要約し、AIからの追加の質問に答える | A2〜B2 | 読むことから話すことへ |
| ピクチャートーク | 単元の絵を描写し、AIが細部について質問する | A1〜B1 | 描写 |
| 理由つきの意見 | 理由を2つ挙げて意見を述べる。AIは丁寧に反論する | B1〜C1 | ディスカッション |
| 登場人物へのインタビュー | AIが教科書の登場人物を演じ、生徒が5つ質問する | A2〜B2 | 質問すること |
| 目標語チャレンジ | 授業で習った5つの単語を、会話の中で自然に使う | A2〜B2 | 語彙の活用 |
| 発音ドリル | 重要な文を言ってスコアを確認し、最も低かった2文をくり返す | A1〜B2 | 発音 |
| プレゼンテーションの練習 | 2分間のスピーチを練習し、聴衆役のAIからの質問に答える | B1〜C1 | まとまった発話 |
| 試験形式の練習 | ロングターンなど、試験のタスク形式を1つ、クラスの評価基準に照らして練習する | B1〜C1 | 試験タスクのスキル |
| AIに教える | 今日の文法事項を、教えるつもりでAIに説明する | B1〜C1 | 正確さ |
| 1分間の振り返り | 今週学んだことと、改善したいことを1つ話す | A2〜C1 | 振り返り |
学期を通して、流暢さのタスク(再話、振り返り)と正確さのタスク(ドリル、目標語)を組み合わせ、宿題でもNationのバランスを保ちましょう。試験形式の練習はあくまで練習で、スコアの予測ではありません。AvoLingoでは、いくつかのアイデアが「Image Talk」(画像トーク)、「Debate」(ディベート)、「Teach the AI」(AIに教える)などの「Conversation」(会話)のモードに対応しており、発音ドリルは「Sentence Learning」(文の学習)に対応しています。「Sentence Learning」では、各文の正確性、流暢性、完全性が採点されます。
そのまま使えるタスクカードのテンプレート
タスクカードとは、スピーキングのタスクの内容、よい答えに含まれるもの、授業に持ち帰ることを、生徒とAIに伝える短い指示書です。テンプレートをコピーし、例に載せたB1の買い物の単元を、ご自身の授業に置き換えてください。
| 項目 | 書く内容 | 例 |
|---|---|---|
| 授業の目標 | 生徒があとでできるようになること | 不良品を返品し、返金や交換を頼む |
| 場面とAIの役 | 状況と、AIが演じる人物 | 新しいヘッドホンが動かなくなった。AIは店員 |
| 目標表現 | 授業で習ったフレーズを3〜6つ | I'd like to return… / It stopped working after… / Could I exchange it? |
| 成功基準 | 聞いて判断できることを2〜3つ | 問題を説明する。丁寧に解決策を求める。目標表現を3つ使う |
| レベル | CEFRのレベル | B1 |
| 時間 | 2回分を含めた合計 | 10〜15分 |
| 取り組む回数 | 何回で、何を変えるか | 2回。フィードバックを読み、1つ直す |
| 振り返り | 最後に1文 | 「AIに…を直されたので、2回目は…」 |
| 授業でのフォローアップ | 生徒が持ち帰ること | 直されたこと1つと、新しいフレーズ1つ |
AIへの指示を書けるツールなら、場面、役、目標表現をそのまま貼り付けましょう。職業をテーマにしたロールプレイについては、ESPのコース設計のガイドをご覧ください。
AIスピーキング宿題で不正を防ぐには?
AIスピーキング宿題で不正を防ぐには、AIが生徒の代わりにこなせないタスクにすることです。生徒自身の声で、自分の生活やその週の授業について話させ、そのあとに振り返りと授業での短い確認を加えます。スピーキングはライティングより人任せにしにくいものの、生徒がチャットボットに原稿を書かせて読み上げることはできます。
- 口頭での発話を求める。ツールが対応していれば、文字入力ではなく音声での回答を求め、時間制限を設けて、長い原稿の読み上げを難しくします。
- 課題を個人的で身近なものにする。「学校までの道のりを説明しよう」「火曜日の授業のフレーズを3つ使おう」は、「旅行について話そう」よりもチャットボットに任せにくい課題です。
- 台本のない追加の質問を使う。AIが質問したり、反論したり、登場人物を演じたりすると、生徒は暗唱ではなく応答しなければなりません。
- 振り返りを求める。最後に、AIに直されたことを1つと、2回目に何を変えたかを書かせます。
- 授業で確認する。直されたことを1つと新しいフレーズを1つペアの相手に伝えさせたり、タスクの一部をその場でもう一度させたりします。
- 重要度を下げる。ほとんどの練習タスクは提出だけを評価し、成績をつけるのは明確に評価する少数のタスクに絞れば、手を抜く理由が減ります。
生徒のデータと年齢制限はどうする?
AIスピーキング宿題を出す前に、学校の方針と地域の法律を確認しましょう。スピーキングのタスクでは、生徒の声が録音され、回答が保存されることがあるからです。ユネスコの2023年9月7日の発表によると、ユネスコの教育と研究における生成AIのためのガイダンス(2023年)は、授業でAIツールを使う年齢の下限を13歳としています。
国によって規則が異なるので、自国と学校の種類に合った規則を確認してください。3つの例を挙げます。
- 米国:COPPA規則(児童オンラインプライバシー保護規則)は、13歳未満の子どもから個人情報を収集するオンラインサービスに要件を定めています。
- 欧州連合:GDPR第8条では、子どもは16歳からオンラインサービスに自分で同意でき、加盟国はこれを13歳まで引き下げることができます。学校は別の法的根拠を使う場合があるので、データ保護責任者に確認してください。
- 韓国:個人情報保護法第22条の2(韓国語、2023年に追加)は、14歳未満の子どもの個人情報の処理に同意が必要な場合、法定代理人の同意を求めています。
語学の先生向けのAIツールを比較するときは、各社に次のことを尋ねましょう。
- 何が記録されるのか(音声、文字起こし、スコア)。どこに、どれくらいの期間保存されるのか。
- 誰が見られるのか。先生、学校、保護者か。
- 生徒のデータはAIモデルの学習に使われるのか。
- 求めに応じて生徒のデータを削除できるのか。
米国教育省のAIと教育・学習に関する2023年の報告書は、最初の提言として「人間が関与し続けること(humans in the loop)」を挙げています。AIの出力が何を意味するかの最終判断は先生が持つ、ということです。学校でAvoLingoの生徒データの取り扱いを確認する必要がある場合は、お問い合わせください。
AIスピーキング練習の限界は?
生徒のためのAIスピーキング練習には、はっきりした限界があります。音声認識は間違えることがあり、話す人の声によって精度が変わり、イントネーションより個々の音に効果があり、物珍しさは薄れていきます。最初からこれらを想定して計画しましょう。
- 新奇性効果。2022年のチャットボットのレビューは、主な課題の1つに新奇性効果を挙げています。ツールに慣れると関心が下がることがあるのです。タスクの種類を変え、短くし、毎回授業と結びつけましょう。
- 認識の誤り。ASRは誤ったフィードバックを返すことがあります。Neri、Cucchiarini、Strik(2008年)は、これが「学習の破綻(learning breakdowns)」につながりかねないと警告しています。スコアは目安として扱い、一部は自分で確認しましょう。
- 話し手による精度の差。5つの商用音声認識システムを調べた2020年のPNASの研究では、米国の黒人の話者の単語誤り率の平均は0.35で、白人の話者の0.19を上回りました。語学学習者を対象にした研究ではありませんが、認識スコアだけで成績をつけない十分な理由になります。
- リズムより個々の音。2024年のメタ分析では、個々の音への効果は大きかったものの、強勢、リズム、イントネーションへの効果は小さく、短期間の練習ではASRを使わない練習と差がありませんでした。発音の練習は数週間かけて計画し、イントネーションは授業で教えましょう。
- 一人での練習は効果が弱い。同じ分析では、ASRと並行してクラスメートと練習した場合の効果は大きく、一人で練習した場合は小さいという結果でした。ステップ8でタスクをペア活動に戻すのはこのためです。効果が最もはっきりしていたのは成人と中級の学習者だったので、年少の生徒や初級者の反応には注意しましょう。
- 本物の会話ではない。AIの相手は、クラスメートや先生、ほかの人と話すための練習であって、その代わりではありません。
よくある質問
AIスピーキング宿題にかける時間はどれくらい?
2回目の取り組みを含めて10〜15分程度なら、たいていの宿題の時間に収まります。これは実践上の目安で、研究による数字ではありません。長いタスクを1回出すより、短いタスクを定期的に出すほうが続けやすくなります。
AIの発音フィードバックは正確ですか?
ASRによるフィードバックは発音、特に個々の音の改善に役立ちますが、音声を誤認識することがあり、強勢、イントネーション、一部のなまりについては信頼性が下がります。スコアは目安として使い、一部は自分で聞いて確認しましょう。
生徒はAIスピーキング宿題で不正ができますか?
できます。たとえば、チャットボットが書いた原稿を読み上げることです。個人的な課題、台本のない追加の質問、時間制限、授業での短い確認があれば、ずっと難しくなります。
先生自身もフィードバックをする必要がありますか?
あります。AIは毎回の取り組みにすぐフィードバックを返しますが、何が重要かを決め、自分の評価基準で成績を調整し、多かった問題を次の授業で扱うのは先生です。
AIスピーキング練習は年少の学習者にも向いていますか?
まず学校の方針と地域の法律を確認してください。ユネスコの2023年のガイダンスは、授業でのAIツールの利用に13歳という年齢制限を設けており、多くの国では、年少の子どものデータについて保護者の同意が必要です。
参考資料
- Nation, P. (2007). The four strands. Innovation in Language Learning and Teaching, 1(1), 2–13.
- Arevart, S. and Nation, P. (1991). Fluency improvement in a second language. RELC Journal, 22(1), 84–94.
- Lyster, R. and Saito, K. (2010). Oral feedback in classroom SLA: a meta-analysis. Studies in Second Language Acquisition, 32(2), 265–302.
- Huang, W., Hew, K. F. and Fryer, L. K. (2022). Chatbots for language learning: are they really useful? A systematic review of chatbot-supported language learning. Journal of Computer Assisted Learning, 38(1), 237–257.
- Ngo, T.-N., Chen, H.-J. and Lai, K.-W. (2024). The effectiveness of automatic speech recognition in ESL/EFL pronunciation: a meta-analysis. ReCALL, 36(1), 4–21.
- Neri, A., Cucchiarini, C. and Strik, H. (2008). The effectiveness of computer-based speech corrective feedback for improving segmental quality in L2 Dutch. ReCALL, 20(2), 225–243.
- Bashori, M., van Hout, R., Strik, H. and Cucchiarini, C. (2022). Web-based language learning and speaking anxiety. Computer Assisted Language Learning, 35(5–6), 1058–1089.
- Koenecke, A. and colleagues (2020). Racial disparities in automated speech recognition. PNAS, 117(14), 7684–7689.
- ユネスコ(2023年)Guidance for generative AI in education and research、プレスリリース(2023年9月7日)
- 米国教育省 教育技術局(2023年)Artificial intelligence and the future of teaching and learning
- 米国連邦取引委員会(FTC)Children's Online Privacy Protection Rule (COPPA)
- 欧州連合(2016年)General Data Protection Regulation (EU) 2016/679、第8条
- 大韓民国 個人情報保護法(Personal Information Protection Act) 第22条の2(韓国語)
AvoLingoチームが



